京都の春「嵐山の桜」2004.4.4
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<嵐山 幽玄の美>
春の嵐山は小雨に煙っていた。
それでも傘を片手の花見客はひきもきらず粛々と渡月橋を渡っている。橋のたもとで渡橋する人の群れを眺めていると、都鳥が音を立てて飛び立った。
ちょうど山の中腹、黄檗宗大悲閣・千光寺のあたりだろうか、緑の中に桜のピンクがおぼろげに浮かんでいる。墨の下絵に絵の具をにじませたかのようだ。 上流の保津川に屋形船が浮かんでいる。
この光景は幽玄の美の世界で、今さらながら日本に生まれてよかったと感じる・・・・・
・・・・・この墨絵の世界は、平安の昔から連綿と続く雅の光景である。
昔のことに思いを馳せれば、角倉了以の保津川浚渫(しゅんせつ)の苦労もあっただろうし、嵯峨院の時代、麗しき女御更衣があまた舟を浮かべて音局を鳴らし歌を詠み、川遊びもしたことだろう。
そんな古のことを思い浮かべながら、現在、目の前に広がる美しさのことを考える・・・・・
そしてこれからもこの美しさはずっと続いて欲しいと願う・・・・・
傘を差して渡月橋をわたり中の島を散策する。
公園中央に張り出した緋毛氈の茶店も、寒々として席に座る人は少ない。これでは商売上ったりだ。
しかしながらさすがに京の名所・嵐山のこと、休日だけあって傘の数は多い。
若い二人から何回もツーショット撮影を頼まれてしまった。とくに枝垂桜の前。逆光気味だったのでフラッシュをたいて撮ってあげたら、怪訝な顔をした。「こういう場合はフラッシュをたけば、お顔が明るく取れるんですよ!」と説明したら、必要以上に驚いて「ありがとう」を連発してくれた。素直な若い人はかわいい。
枝垂桜もピンクの色を失い、その純白に近い花びらもうなだれて下を向いている。短い花の命に人の世のはかなさをダブらせる古人(いにしえびと)はいい歌を詠んだが、嵐山の桜はこんなにたくさんの花見人に見守られ幸せである。
花の色は 移りにけりな いたずらに
わが身世にふる ながめせしまに
(小野小町)
<桜もち>
甘いお話を・・・。
渡月橋のたもとに人力車がたむろし、そのすぐ近く「櫻もち本家・琴きき茶屋」の前に行列ができていた。
桜もちの元祖といわれている東京は向島「長命寺の桜もち」は薄い小麦粉生地で餡を包んだもので、8代将軍吉宗のころ大川端の桜の葉を利用して長命寺の門番・山本新六が考案した。
関東ではこれが主流だが、関西では道明寺粉で作ったものが多くなる。
道明寺粉は、もち米を細かくひき割りして加工したもので、つぶ状でもちっとした食感がある。葉は塩漬けされていて、その瑞々しく華やかな香りと、甘さを抑えた餅との上品なバランスが女性ファンに愛されている。
「琴きき茶屋の桜もち」はもちろん道明寺餅だが、桜の葉2枚で挟んだもの(餡は、はいっていない)と、甘さ控えめのこしあんで包んだものの2種類がある。(写真)
関東風と関西風、どちらが先に誕生したのだろうか?そして、あなたはどちらが好みですか?
自宅に帰って一ついただいたが・・・・・うーん!?
余談。墨田区向島・長命寺の近くには「桜もち」ばかりでなく、「言問団子」や地蔵坂の「きび団子」など昔ながらの名物が今でも残り、散歩する人の口を楽しませてくれる。
<ソフトクリーム>
もう一つ、甘いお話。
ソフトクリームは各地で、その名産品の味を加工して、新製品が誕生しているようである。「巨峰」や「イチゴ」「ブルーベリー」「りんご」「びわ」「みかん」「チェリー」など果実系はほとんど出揃い、また甘み系素材もほとんどが製品化されているが、「ラベンダソフト」のように優れた香りをもつものも製品化の対象になっている。また珍しいところでは「とうふソフト」や「蕎麦ソフト」「ウニソフト」「モロヘイヤ」などもある。
京都では「八橋ソフト」や「黒豆きな粉の豆乳ソフト」、志ば漬け本舗の「志そソフト」、醍醐寺の「桜ソフト」、嵐山・新八茶屋の「おはぎジェラード」など、名物を巧みに取り込んだバリエーションが楽しめる。
この日わたしは渡月橋近くの「サガパー」(京都嵯峨にあるパーラーの意、プランタン銀座B1にも出店中)で、左党のわたしとしては珍しく、恐る恐る「京抹茶の栗ぜんざいソフト」という豪華な逸品を頼んでみた。
抹茶ソフトをベースに餡がたっぷりはいり、上に栗と白玉が乗っている。おまけに舌休めに八橋が差し込んである。甘さたっぷりのこのソフトを嵐山を背景にいただいた。うーん!おいしい!? <続く>
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